利用者さんを送迎する車に感染症防止対策を――。COCO-LOでは総務グループの吉野澄良さんと中島孝さんが中心になり、車内に手づくりのパーテーションを設置しています。一台一台、心を込めて施工している吉野さんと中島さんに、工夫したポイントや苦労談を聞きました。
■取材・執筆/阿部奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)
安心して利用
していただけるように
新型コロナウイルス感染症が再び広がっています。COCO-LOでは感染症防止対策の一つとして、30台あるすべての送迎車内にパーテーションを設けることにしました。
車は不特定多数が利用するものではないから、それほど神経質にならなくても大丈夫という話もよく聞きますが、念には念を入れたいもの。
「車の中では、利用者さん同士、あるいはスタッフと利用者さんで話をすることが多いんです。パーテーションがあれば、安心される方もいるのではと考えました」と企画室の乾響子さんは言います。
車好きで手先が器用な
男性二人が担当
パーテーションは既成のものを使用せず、手づくりすることに決定。その理由は、COCO-LOには車好きで、手先の器用な二人の男性スタッフがいるからです。元消防士の吉野さんと、元金物屋で自転車屋店員という経歴も持つ中島さんです。
材料の購入から設計図の作成、施工まで、二人で行うことになりました。彼らが考えたパーテーションの仕組みはこんな感じです。
「まず、車体の右端から左端まで8号の太い針金を渡らせて横軸をつくる。普通車の場合は2本、3列シートのワゴン車の場合は3本。そこにビニールシートをクリップで止めます。次に細い針金で、太い針金を結んで縦軸をつくり、ビニールシートを止める。こうして縦と横で仕切るのです」と吉野さんは解説します。
経費節減にも貢献
早速、材料を量販店に買いに行った吉野さん。「通販サイトで見た既成のパーテーションは1台分1万円以上と高額でした。でも、手づくりすれば材料代だけだから10分の1で済みました。経費節減に一役買えて良かった」とニッコリ。
太い針金を切る・曲げるに
悪戦苦闘
施工は業務の合間を縫って、11月24日からスタートしました。記念すべき1台目はミニバン。「思いのほか苦労したのは、横軸になる太くて固い針金をペンチで切ったり、曲げたりすること。すごく力がいるんですよ」と中島さん。「昔、金物屋に務めてはいたけれど、売るのが専門だったからね」と笑います。
細い針金を使えば簡単ですが、耐久性が弱まってしまいます。つくってみたものの、すぐにビニールシートが垂れ下がってしまっては元も子もありません。
「太い針金を、ドアの柱と天井のつなぎめに入れ込むのも苦労したなあ」と振り返る吉野さん。
こうして二人で試行錯誤を重ねながら、約1時間30分でお手製のパーテーションが完成しました。「我ながらよくできたと思いました」、吉野さんは胸を張ります。
利用者さんの喜ぶ顔を
頭に浮かべながら
2台目以降はコツをつかんで、1台分を1時間で作成していき、約1週間で『ココロデイサービス』と『ココロアットホーム』の送迎車、合計11台にパーテーションが完備されました。大きなワゴン車もあれば、軽自動車もある。車のサイズが統一されていないので、一台一台、採寸し、オーダーメイドで仕上げていきます。
作業しながら、頭をよぎるのは利用者さんの喜ぶ顔。それがあるから、寒い日も風の強い日も屋外での力仕事を続けられたのです。
作成の過程で、いくつかの改良も加えられたといいます。例えば「運転席と助手席の間のビニールシートは透明度の高いものを使用するようにしました。運転席から助手席側のサイドミラーが見にくいので」と吉野さん。
本当の願いは
パーテーションの無い世の中
年内にはココロガーデンとココロデイサービスまえばしの送迎車のパーテーションも完成させる予定です。今や、商売でパーテーション屋ができるくらいの腕前になっている吉野さんと中島さん。でも、心の中は複雑だといいます。
「今は便利に使ってもらっているけれど、本音は早くコロナが収束して、このパーテーションが取れることが願い。良いワクチンが早くできてほしいね」、ポツリと放った中島さんの言葉が印象的でした。