【桐生人をたずねて】やりたいことを仕事に─飛び込んだ楽器作りの世界

この記事は、ココロ日和2017年秋号に掲載されたものです。

桐生人をたずねて 第3回

今回は、桐生市本町4丁目にてヴァイオリン工房を経営している、伊藤丈晃さんをご紹介します。
伊藤さんは群馬県太田市のご出身で、東京の佐々木ヴァイオリン製作工房に弟子入りし、弦楽器作り一筋でやってきました。

伊藤丈晃さん
・群馬県太田市出身
・2007年より桐生市でヴァイオリン工房を経営

 

ヴァイオリンとの出会いを教えてください。

高校の部活で初めて触ることに。

高校でオーケストラ部に入部し、ヴァイオリンよりも一回り大きいヴィオラという楽器を担当することになりました。中学生の頃はバンドを組んでギターを弾いていましたが、弦楽器に触れる機会はその程度でした。
ヴァイオリンというと、貴族の子供じゃないと触れないという、少しイケ好かないイメージも正直ありました。しかし、実際に弾いてみると身近な楽器に感じられたのを覚えています。

 

作ろうと思ったきっかけは何ですか?

やりたいことを仕事に─

大学生の頃、バイトをいくつか経験する中で、「人生の中で仕事をする時間は長く、やりたいことにこだわらないといけない」と考えるようになりました。音楽はずっと好きで、音楽に携わっていたいと思っていました。お側に置いて下さいという感覚です(笑)。

オケを続けていましたが、かといって自分はプレーヤーではないと確信していました。大学に行くと、身近にすごい演奏家がたくさんいましたから。目指すものが自分と全く違いました。

楽器の本が好きでよく読んでいました。ある時、「弦楽器のしくみとメンテナンス」という本に出会い、その著者がヴァイオリン工房の弟子を募集していることを知りました。「1人」という募集枠を見て、すぐに面接に行きました。当時は学生だったので、大学を中退して弟子入りするために、両親を説得ました。ヴァイオリン作りの専門学校はいくつかありますが、師匠に認められれば、ヴァイオリン作りが仕事にでき、技術的に渡り歩けるだろうと思いました。

 

弾く側と作る側とでは大きく違いが出てくると思うのですが、抵抗は無かったのですか?

木が好きみたいです。

昔から、興味を持ったものは、気になって何でも作ってみたかったです。図工の課題で、木のスプーンを夢中で作り、先生にすごく褒められました(笑)。高校生の頃に、エレキギターを作るキットで遊んでいたりもしました。ヴァイオリンも、中がどうなっているのか気になっていました。車やプラモデルよりも、木のかたまりでずっと遊んでいました。当時は気が付きませんでしたが、今思うと僕は木が好きなんですね。


 

製作している上でのこだわりがあったら教えて下さい。

時代に合ったものを用意できる人になりたい。

ヴァイオリンは、お金もかかりますし、世の中に求められている楽器ではないかもしれませんが、ギターを買うことと同じような感覚で提供できればと思っています。

ヴァイオリンは歴史の長い楽器なだけあり、アレンジや扱いが難しいですが、使っている方には、最低限いつまでも新鮮さを感じてもらいたいと思っています。買った瞬間に良さに気付かなくても、形・音、総合的に考えて飽きさせない工夫を自分の中でしているつもりです。思わぬところで魅力を発見してもらえると嬉しいです。

 


学校に通うのではなく、師匠の元で全てをかけてヴァイオリン作りを学ぶ姿勢が、職人そのものだと思いました。伊藤さんのような職人さんが、ものづくりの町 桐生にいて下さることを嬉しく思います。伊藤さんから自分を追求することの大切さを学びました。

参考 伊藤丈晃ヴァイオリン工房takeaki-ito.com
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