【群馬人をたずねて】地域・社会貢献の新しいカタチ。個性豊かな野菜のブーケで農業を守る、ベジフラワーアーティスト。

この記事は、ココロ日和2019年夏号に掲載されたものです。

群馬人をたずねて 第1回

つくって癒やされ、贈って喜ばれ、食べて美味しいー。高崎市在住の中澤洋子さんは、野菜を使ったブーケやオブジェを手掛けるアーティスト。また、後進を育てるスクール「野菜ブーケSenka」の創設者でもあります。中澤さんに野菜ブーケの魅力を伺いました。

 
まず野菜ブーケとはどんなものなのか、具体的に教えてください。

 野菜の形状を生かし、バランスよく束ね、色を組み合わせて、ブーケや食卓を飾るオブジェをつくります。地産地消の考え方から、私が使う野菜は群馬県で採れた旬のものがメインです。
 飾って楽しむだけでなく、野菜ブーケはそのあと、食べられるのが魅力です。珍しい野菜を使うときは、食べ方のレシピも一緒にお届けするようにしています。

 
野菜ブーケはどんな場面で活躍するのですか?

 お友達へのプレゼントや、パーティーやウェディング会場の装飾としても注目されています。贈られた方は必ず「え、こんなブーケ見たことがない」と驚かれるので、最高のサプライズになります。
 パーティーでは野菜ブーケをサラダ代わりにつまんで、ソースをつけて食べていただいたり、調理してお食事の一品としてお出しするというパフォーマンスも人気があるようです。

 
中澤さんと野菜ブーケとの出会いとは?

 20代の頃から花を使った空間コーディネートや舞台演出を手がけてきました。和と洋を混在させた私の世界観は、海外で高く評価され、オーストリアやトルコ、モナコ、オランダなどの芸術祭で数々の賞をいただきました。
「自分が生まれ育った群馬にも何か恩返しをしたい」と考えていたときに、キリンビールマーケティング様から、「自然豊かな群馬の恵みである野菜や果物を使ってアレンジメントをつくれないものか」とご提案いただいたのがきっかけです。2008年のことでした。
 そこで、味は同じなのに、カタチが悪いというだけで廃棄される野菜を使ってみようと考えたのです。野菜ブーケにすれば、曲がったキュウリや色が均一でない野菜も、それが個性となります。「これは将来性のあるコンテンツになるぞ」とひらめきました。

 
野菜ブーケを完成させるまでにどんなご苦労があったのですか?

 地場の野菜について知ろうと、まずは群馬県内の農家さんを訪ねてまわりました。一番苦労したのは、野菜の特性を理解することです。特に、鮮度の落ち方は野菜によって大きく異なります。作品になった瞬間は美しくても、依頼主にお届けするまでに、しゅんと力が無くなっていてはダメです。
 どんな野菜がどのくらい美しさを保てるか、半日、1日、3日と観察し実験を繰り返しました。葉ものではサニーレタスの持ちがよく、パセリやホウレン草は鮮度が落ちやすい。また、栽培する土壌によっても、野菜の賞味期限や味が大きく異なることもわかりました。
 2011年には、野菜ブーケを“ベジフラワー”と名付けて(一社)日本野菜ソムリエ協会と共に、ベジフラワーアーティスト養成講座を立ち上げました。現在、国内に150人以上の有資格者がいます。

 
中澤さんは『野菜ブーケSenka』というスクールも運営されています。その内容とは?

 ベジフラワーよりもっとナチュラルな、野菜そのもののカタチを生かした作品をつくります。野菜を使った空間演出やウェディングの装飾も学び、試験に合格すると、ベジタブルプロダクトプランナーの資格を取得できます。
 現在、群馬県内(前橋、高崎、桐生)のほか、東京、埼玉、栃木、長野、和歌山、山口などに地域校があります。それぞれの土地で採れる野菜を使ってブーケをつくりますので、作品にお国柄が出るのがおもしろいところですね。

 
中澤さんのこれからの目標を教えてください。

 とにかく野菜ブーケを多くの人に広めることです。それが日本の農業を守っていくことにもつながると思います。
 2016年にはイタリアソレントとモディナで、2018年には銀座の伊東屋で発表会を開きました。今年の秋には、まだ内緒なのですが、誰もが知る画期的な場所で発表会を行います。どうぞご期待ください。

(取材/オリーブ・アンド・パートナーズ 阿部 奈穂子)

野菜ブーケSenka本校
ベジフルフラワーアーティスト養成講座事務局
群馬県高崎市飯塚町490-101(グリームナック内)
TEL027-370-0379

参考 野菜ブーケSenkahttps://www.gleam-nac.com/?page_id=36
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