【群馬人をたずねて】美味しい料理は美しい器があってこそ。

この記事は、ココロ日和2019年秋号に掲載されたものです。

 鶴舞う形の群馬県をかたどった皿が今、じわじわと人気を集めています。
 これは、創業62年の業務用食器卸会社「三美堂」の四代目・吉村聡さんがプロデュースした商品で、名前はずばり「ぐんまのお皿」。
 その後、鶴の形の箸置きやコースター、鮫皮おろしなども登場。2019年1月には「toool(つーーーる)」というブランドを立ち上げました。群馬愛にあふれる吉村さんに、製作の裏話を聞きました。

 
なぜ、ぐんまのお皿をつくろうと思ったのですか?

吉村 群馬という地域をひと目でアピールできる器をつくりたかったのです。群馬県の型をつくり、信頼のおける信楽焼の窯元で制作してもらいました。「タタラ成形」といって、板状の粘土に型をあててカットしていく方法です。その際、「群馬は山が多いので、土に小石を混ぜて、表面をゴツゴツした感じに仕上げてください」と注文を出しました。
 また、航空写真を見ると、群馬は県土の3分の2が山林です。そこで、織部という緑色の釉薬をかけて焼いてもらいました。混ぜる小石の分量や大きさ、厚さなど試作を繰り返し、販売開始となったのは1年後の2018年2月でした。

 
お皿の大きさと厚さを教えてください。

吉村 大きさは長辺27㎝です。素材が採れた場所に、その素材で作った料理を盛り付けられる皿にしたかったんです。
 例えば、昭和村の野菜でつくった料理なら、皿の真ん中より少し上あたりに。それができるよう、ある程度の大きさが必要でした。
 厚さは鶴の首の部分の強度が確保できるようやや厚めの1.5㎝。そのため、重さは1kgにもなってしまいましたが、お客様にはおおむね好評をいただいています。

 
その後、どんどんバリエーションが広がっていったのですね?

吉村 はじめはフラットな鶴の形のお皿だけだったのですが、群馬の山々をリアルに表現するお皿もほしいと思いまして。等高線や立体地図にもとづいて、高低差のあるお皿をつくりました。上毛かるたには「裾野は長し、赤城山」とありますが、このお皿を見ると、赤城山の裾野が南の方にすーっと長く続いているのがわかります。

 
群馬の山にかなりこだわっていらっしゃいますね。

吉村 山にも川にも、そこで暮らす生物にもこだわっています。私は高校時代、山岳部に所属し、今でも里山整備のボランティアや緑のインタープリターの活動を行っています。小中学生と一緒に川に住む生物の観察をしたり・・・。
 群馬の自然には思い入れが強いので、それが商品づくりに結びついたのだと思います。

 
お皿以外に吉村さんが企画した商品を教えてください。

吉村 鶴の形の箸置きや紙製のコースターもつくりました。また、県内でワサビ生産をしている方から、「鶴の形のわさびおろしをつくれないか?」とご注文をいただきまして、木目に鮫皮を張り付けた商品を開発しました。名前は上州名物、赤城颪(あかぎおろし)にひっかけて「赤城颪おろし」です。
 ぐんまのお皿とこれらは「toool(つーーーる)」というブランド名で発売しています。鶴とツール(道具)を掛け合わせた造語です。これからも群馬をテーマにしたtooolのラインナップを増やしていきたいですね。


 
遊び心たっぷりですね。お客さんはどんな方が多いのですか?

吉村 「ぐんまのお皿」は飲食店やホテルさんが多いですね。今、群馬県内や東京など20店舗のお店で使っていただいています。飲食店でこのお皿を使ってお料理を出すと、必ず、お客様と群馬の話題で盛り上がるのだそうです。1枚のお皿から群馬をテーマにしたコミュニケーションが始まるのは、本当に嬉しいことです。
 また、ネット販売をスタートしてからは、他県で暮らす群馬にゆかりのある方からもご注文をいただいています。

 
最後に、吉村さんのこれからの目標を教えてください。

吉村 料理人の方とコラボして、器と食で群馬の魅力を国内外に発信していきたいと思います。それと同時に、和食器を盛り上げていきたいですね。和食器は生産工程が多く、高い技術が必要なのですが、それがまだまだ伝わっていないように感じます。美味しい料理は美しい器が合ってこそ、映えるもの。それが食器屋で生まれ育った私の使命だと思います。

参考 toool(つーーーる)toool(つーーーる)

(取材/オリーブ・アンド・パートナーズ 阿部 奈穂子)

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