同文舘出版の編集者が語る 雅樂川社長の本の肝はココ!

本は、著者と編集者が二人三脚でつくりあげます。編集者とは、どんな本にするかという企画に始まり、内容を組み立てたり、タイトルを付けたり、著者からあがってくる原稿を修正したり、1冊の本の誕生のすべてに関わる大切な仕事を担います。本の出来栄えは、編集者の腕前によるところが大きいのです。そこで、雅樂川社長の本『働きやすさを本気で考えたら、会社の売上が5倍になりました。』を担当してくださった編集者、同文舘出版の竹並治子さんに同書に対する想いを聞きました。

聞き手/阿部 奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)

――雅樂川さんからあがってきた原稿を読んで、まず、どんな風に感じましたか?

竹並 率直なところ、「うらやましい会社だなあ」と思いました。入社後も、気持ちよく仕事を続けてもらうにはどうしたらいいかと、雅樂川さんが真剣に考えている。年に一度、一人ひとりと面談をして、常にスタッフの想いを汲み取りながら、成長を支援している。だからこそ、会社は順調に成長し、人材も育っているのだと実感しました。
 また、雅樂川さんは、お客様に対しても真剣に向き合っています。業界によって、お客様に選ばれるには何をやったらいいか、というポイントは違います。COCO-LOは介護なので、利用者さんにたくさん利用してもらうことが、ポイントです。そのために何をやったらいいかをきちんと考え、スタッフと共有し、一つひとつ実行しています。
 経営がうまくいくと、スタッフを多めに雇用することができます。COCO-LOでは全スタッフの1割がいなくても回るようなしくみづくりに成功しました。それだけのゆとりを持つには無駄をとことん省き、効率化を追及した結果なのですが……。多分、雅樂川さんは王道のことをしていらっしゃるんだと思います。でも、そこまで到達できていない企業が多いのが事実なのでしょう。

――なぜできないのだと思いますか?

竹並 うまく回らない真の要因をとことん掘り下げることは、簡単ではないからだと思います。「人が辞めちゃって、人手不足だ……」、「売り上げが上がらない……」といった危機に直面しても、「みんなでがんばろう!」とその場を乗り切ってしまう。そうやって乗り切る場面もときには必要でしょうが、根本解決にはならないですよね。どこに原因があるのか? どんな対策をとればいいのか? と一歩踏み込むのは、容易なことではありません。COCO-LOさんも創業当初は人が集まらずに苦労されて、職場環境を整備していった経緯があります。実現している企業もあるわけですから、この本の中から自分の会社に適したしくみを選び取り、一つでも二つでも実践していってもらえればと思います。
 COCO-LOの場合、雅樂川さんがプレーヤーからマネージャーに潔く転身したのも良かったのでしょうね。2012年、従業員が30人くらいのとき。妊娠・出産を経て、強制的に今の職場環境を変えなければいけないと思ったと、書かれています。妊娠・出産という強制力が良い方向に向きましたね。やむにやまれぬ状況に追い込まれて、はじめて、本気で変わろうと決意できるのかもしれません。

――この本にはCOCO-LOのしくみや制度が事細かに記されています。雅樂川さんは、「ここまで出していいものか」とかなり悩まれたそうですが……。

竹並 それが、この本の肝になっているわけです。個人評価シート、気づきカード、ヒヤリハットシート、COCO-LOオリジナル手帳など、詳しく図解入りで使わせてもらいました。自社で開発したココロシステムや、スタッフのやる気を引き出す目標値の立て方についてもすべて書いてもらいました。そのくらいでないと、皆さんに読んでいただける本にはなりません。このしくみですが、本当に意欲がある企業なら真似できると思います。でも、面倒だなという思いがあったりすると、カタチだけ整えてもうまくいかないかもしれませんね。

――本のタイトルを付けたのは、竹並さんだと伺いました。『働きやすさを本気で考えたら、会社の売上が5倍になりました。』。あまりビジネス書らしくないタイトルですが、どんな狙いがあったのですか?

竹並 雅樂川さんは可愛らしい方だったので、柔らかい感じにしたかったのです。「私、バリバリな経営者です」という感じのタイトルではなく、みんなで頑張っている感じ。雅樂川さんやCOCO-LOさんからそういうイメージを受けて、タイトルを決めました。それだけだと少し弱いので、「女性9割・子育てスタッフ6割で実現する働き方改革」という言葉をサブタイトルとして入れました。雅樂川さんは「ビジネスは数値化することが大切」と本の中で書かれていたので、タイトルにもなるべく数字を入れるようにしました。

――本の中で、特に印象に残っている部分はどこですか?

竹並 第4章に、雅樂川さんが作業療法士の専門学校で学んだことが書かれています。そこで、「人はみな違うのだ」ということがわかり、自分の核になったと……。それが大変印象的でした。作業療法士は、体が不自由になった患者さんに対して、どうやったら機能を高められるか、合理的に考えて、いろいろな計画を立てて実践していきます。経営者となった雅樂川さんにとって、会社が患者さんなのでしょうね。どうしたら会社がよくなるかを合理的に考え、計画を立て、行動しています。作業療法士として働くのと、同じような思考が見えて、非常に面白かったです。

――最後に読者の方にひと言お願いいたします。

竹並 中小企業でも、来年4月から「働き方改革法」が施行されますが、「残業を減らせ」「有休を消化しろ」と号令をかけるだけでは、うまくいかないはずです。労働時間が減っても利益を生み出すには、業務を効率化したり、習熟度を高める必要があります。どの業務がムダで、何に注力すべきかを見極めるための時間も確保しなければならないでしょう。効率化のために、IT等への投資も必要になるかもしれません。
そうしたことを15年間積み上げてきたのがCOCO-LOさんなので、これから働き方改革に取り組む中小企業の経営者、幹部・リーダー層の方の参考になる一冊だと思います。
「社員が成長し、会社も成長するしくみ」なので、まずは読んでいただきたいです。

――ありがとうございました。

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