桐生人をたずねて 第6回
今回は、帽子を製作・販売するcom+position(コンポジション)の 齋藤良之さん、大山了さん、牛丸理恵子さんにお話を伺いました。
桐生市の重伝建地区である本町2丁目の旧津久井機料店にて2016年にお店を構え、本町通り沿いにて販売と作業工程を見てもらうための店舗を今年の3月にオープンしました。
今のお仕事に行き着くまでの経緯を教えてください。
齋藤さん(以下 サ) 埼玉出身です。昔から服が好きで、アクセサリーデザインの専門学校を卒業後、アパレル経営や縫製会社をいくつか経験しました。平面から立体になる過程を学びたいと思い、縫製以外にもニットや刺繍などを一通り学びました。
会社勤めの時に、刺繍を請け負ってもらっていた桐生市川内町にある有限会社松盛ジャガードの専務 松村剛さんが「個人で経営した方が良い、協力するから」と背中を押してくれたのが独立のきっかけです。独立前を振り返ると、仕事は楽しかったものの自分を活かせる場所がなかったように思います。
大山さん 千葉県出身です。物を作ることが昔から好きでした。家が和菓子屋で、食品関係に行くかと思いきや、ペットボトルを作る会社や手焼きせんべいを作る仕事に就き、その後 17年間、制帽・官帽を作る仕事に就きました。
帽子を縫う作業は左手もたくさん使います。今まで経験した仕事内容が役立っていると思いました。この作業は、自分の感覚で個性や違いが出せて面白いです。齋藤さんに声をかけられ、人柄もあり一緒に仕事をしようと思いました。
牛丸さん(以下 ウ) みどり市の出身です。家が縫製屋で、小さい頃から母と一緒に縫製・編み物・刺繍などの手芸をしていました。手を動かすこの時間が、集中できとても楽しかったのを覚えています。服飾の専門を卒業し、自分も縫製の仕事に就きました。
齋藤さんは職場の同僚でした。社内で縫製ができる人が欲しいというお店の希望と自分の気持ちやタイミングが合い、ご縁あって今年の1月から一緒にお仕事しています。
お仕事をする場所を桐生に決めた理由は何ですか?
サ)繊維が盛んな桐生です。仕事上の悩みがあってもいろいろな場所で、また近場で問題が解決できます。縫製やブレード・刺繍などの仕事を、都内と地域の間に入って受けることもできます。とても仕事がしやすい場所だと思っています。
ウ)桐生といえば機音やミシンの音。音数が少なくなってきたと言われますが、まだ聞こえます。
サ)アンティーク雑貨や古い建物がすごく好きなので、桐生の古い建物に魅力を感じました。本町の表通りに出て来ましたが、雰囲気のある石蔵でひっそりと仕事をするのも好きです。また、桐生はおしゃれなお客様が多いです。お散歩の途中でふらっと買っていかれる方もいらっしゃいます。
本物の品を知っている方が多いので、商品で嘘はつけないし誤魔化せない。そこがまた桐生の好きな所です。
仕事(com+position)への思いを教えてください。
3人)頭の形など様々な理由で被れない帽子を、被れるようにしたかった。オーダーメイドはもちろん、お持ちの帽子も直します。
お客様の笑顔が原動力になっています。帽子を被った自分を鏡で見て笑顔になる瞬間、こちらもとても嬉しくなります。
サ)縫製はみんなできますが、別々の部門でやって来た3人です。名前の由来は、Com(共に)+position(構築する)という意味があり、ピエト・モンドリアンのcompositionという絵のように、どの時代においても古くならない物を作りたいという意味を込めています。楽しく、正直に、誠実に帽子を作っていきたいです。
お客様にぴったりの帽子を作ろうと、プロ3人がそれぞれ一流の一品を志している気持ちが伝わりました。桐生という場所を活かし、帽子を通して多くの人や物を繋いでいると思いました。