暮らしがかわる「よい呼吸」とは? ~呼吸を整え、からだに酸素をおくりましょう~

呼吸のはなし

私たちは生まれたその瞬間から、もちろん今このときも、呼吸をして生きています。
生きるために必要不可欠な「呼吸」。その重要性はわかっていても、普段から呼吸を意識して生活している人はどれほどいるでしょうか。
無意識でも、人間は1日になんと2万回!もの呼吸をしています。もちろん寝ている間もずっと、生命維持装置の役割を果たしているのです。

 
◆生きるためのエネルギーを作る

体内では、食べ物を分解して作られたブドウ糖などの栄養と、呼吸で取り入れた酸素が結びついてエネルギーが生まれます。酸素が使われエネルギーが生まれたあとには二酸化炭素ができます。二酸化炭素は体内にあると有害なため、肺から呼吸により体の外に吐(は)き出されます。
 
◆よい呼吸、悪い呼吸

効率よく適正量の酸素を取り込むことが「よい呼吸」と言えます。
酸素が足りないといわゆる酸欠、逆に酸素が多すぎると過呼吸となり、少なすぎても多すぎても悪い呼吸となるのです。酸素が十分体に行きわたらない場合、不調や病気の原因の一つになりえます。また、病気によって酸素が全身に行き届かない場合は、酸素の吸入、呼吸リハビリテーションなど何らかの手立てが必要になります。

◆悪い呼吸から起こりうるリスク

呼吸機能が低下してくると体力の低下が起こることは想像しやすいでしょう。筋肉は酸素を栄養源としているため、筋力低下を起こして体が痩せてくる場合があります。十分な酸素を取り込めないことで、そのほかにも全身の機能低下が見られてきます。
また、肺から取り込んだ酸素の20~25%は脳で消費するといわれています。脳への酸素が足りないと、判断力の低下をまねいたり認知症が進みやすくなったりと、意外と思われるような症状を引き起こします。酸素が不十分な状態で過ごしているとイライラしやすくなる傾向もあります。
その他、酸素不足は内臓の疾患にもつながりやすいので、必要十分量の酸素を体内に入れることは、とても大切です。

◆呼吸が変われば暮らしが変わる

呼吸によって暮らしそのものが改善されたケースを紹介します。
「24時間在宅酸素を必要とする利用者さんがいました。高齢で少しずつ認知症の症状も出始めていて、酸素不足の苦しさからいつもイライラしている様子がうかがえました。呼吸が浅くなると呼吸機器全体が固くなることがあるため、私の手やリハビリテーション手技を使って、肺などの固くなった呼吸機能の改善を図りました。
脳に酸素が行き渡るようになると、本人はとても楽になったようで、笑顔や会話が増えていきました。さらに、イライラや疲れが減ったため食事の量も増加しました。本人が楽になったことで、介護するご家族の負担も軽減したことがありました。(ココロスタッフ猪熊さん)」
このように呼吸の状態を改善することによってだけで、生活の質までもが変わるケースがあるのですね。


 

よりよい呼吸をするために

◆まずは深呼吸から
たとえば呼吸が乱れている時には、
①鼻から息を吸って口からゆっくりと吐き出す
②腹式呼吸を意識する
これだけでも、心を落ち着かせて自律神経を整えることができるとされています。
「ゆっくり深く息を吸いましょう」とは、簡単ですが適切なアドバイスですね。とくに心拍数や血圧が上昇しているようなときには有効なので、ぜひ思い出して試してみてください。



 
◆肺は鍛えることができる?
鍛えることはできません。
肺が酸素を取り込む力は20歳をピークに低下するといわれていますが、残念ながら肺そのものを鍛えることはできません。肺活量が増えたからといって、肺が鍛えられたわけではなく、細胞の数を増やすことはできないのです。
よい呼吸をするために重要なのは、「横隔膜」です。肺のまわりの筋肉が大きくやわらかく動くことで、より多くの空気を取り込むことができるようになります。人は、呼吸をするために首から腹筋、背筋と多くの筋肉を使っています。「横隔膜」等、呼吸にかかわる筋力が弱くなると、腹筋・背筋に頼った呼吸となるため、疲れやすさを感じやすくなります。
 
◆鼻呼吸と口呼吸、どちらがいいの?
鼻呼吸を心がけましょう。
口呼吸がなぜいけないのか? それは体を守る2つのフィルターの機能が低下するからです。そのフィルターとは「鼻毛」と「せん毛」。
口呼吸だと、鼻毛のフィルターを通過しないので、菌やウイルスを取り込みやすくなります。せん毛はのどや器官などにある毛のような組織で、これも菌、ウイルスの侵入を防いでいます。口呼吸が原因でせん毛が乾燥すると、菌やウイルスをブロックする機能が低下してしまうのです。空気を取り込む際には、二重のフィルターがかかっているのですね。非常によくできています。
 
◆あいうべ体操
よい呼吸のためには、顔の筋肉も大事です。
あ~、い~、う~、べ~、と3秒ずつはっきりと声を出してみましょう。顔の筋肉の動きを意識して、べ~のときには舌を出します。
 
◆できる範囲で体操してみましょう。
①両手を頭の後ろで組み、鼻から3秒間息を吸う。
*肺のまわりの筋肉が横方向に伸ばされます。
②口から6秒かけて息を吐きながら、手を組んだまま上に伸ばします。
*今度は縦方向に肺のまわりの筋肉を伸ばします。
 

姿勢を正して酸素を取り込もう

冬は呼吸が浅く、酸素の取り込み不足になりがちです。その理由はなんと「猫背」。
寒い時期はどうしても猫背になりがちですが、その姿勢が肺を圧迫し、酸素の取り込み不足にとなりやすいのです。姿勢を正して酸素をたっぷりと肺に送り込んであげましょう。

まずは深呼吸から。
そして無理なくできる範囲の体操をしてみましょう。呼吸に少し意識を向けることで、みなさんの生活の質が向上することを願っています。

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