ココロで総務、交通・防災担当を務める吉野澄良さん(73)が、この春の危険業務従事者叙勲で瑞宝双光章を受章した。5月8日には群馬県庁昭和庁舎で伝達式があり、山本一太群馬県知事から賞状と勲章を授与された。桐生市消防本部で42年間、人命救助の現場に立ち続けた功績が認められた。
■取材/阿部奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)
42年の消防人生に栄誉

「こんな日が来るとは思わなかったですよ」
吉野さんは照れくさそうにそう話す。ココロのスタッフの中で叙勲受章者が出るのは初めて。スタッフはサプライズで大きな花束を用意し、「奥様と一緒にお食事へどうぞ」とレストランの食事券を贈った。
「みなさんの気持ちがうれしいです」
吉野さんは花束を抱えながら、声を震わせた。
高校卒業後、公務員の道を志した。市役所に勤めることも考えたが、選んだのは消防士だった。
「学生時代の先輩が消防士になり、その姿に憧れました。人のためになる仕事をしたい、人命救助の道で生きていこうと思ったんです」
桐生市消防本部で42年間勤務。火災や交通事故、救助など数々の現場を経験してきた。
交通事故の現場では、正面衝突で車内に挟まれた人を救出し病院へ搬送した。橋から川へ転落した人の捜索では、ゴムボートを出して川を探した。火災現場では、映画「タワーリング・インフェルノ」のように空気呼吸器を背負い、煙の充満した建物に入り、逃げ遅れた人を捜索した。
「命がある限り、絶対に助ける」
吉野さんは、そう心に決めて現場に向かっていた。
驚きと喜びの受章

昨年夏、勤務していた桐生市消防本部から「該当者なので申請する」と連絡を受けた。消防職員として長年勤務し、功績を重ねた人が対象となる。
今年1月には県の担当者から電話があり、受章者に決まったことを知らされた。
「先輩方が受章しているのは知っていました。でも、まさか私がもらえるとは思いませんでした」
伝達式当日はモーニングコート姿で出席した。
「靴とワイシャツ以外はレンタルです。こんな正装をしたのは結婚式以来ですよ」
照れくさそうに笑う。
今年春は、褒章13人、叙勲61人、警察や消防などを対象とした危険業務従事者叙勲49人が受章した。吉野さんもその一人となった。
受け取った瑞宝双光章は、漆塗りの箱に納められている。中心には伊勢神宮の宝鏡をかたどった意匠があり、そこから光が放射状に広がるようなデザインだ。
「小さいけれど重みがありますね」
現在は賞状とともに寝室に飾っている。
「吉野家の家宝にします」
大切そうに勲章を見つめた。
安全への思いを次世代へ

ココロ代表の雅樂川陽子さんは、「ココロで勲章をもらった人は初めて。私たちにとっても誇らしい出来事です」と祝福する。
現在、吉野さんは総務として交通・防災を担当している。年1回の交通安全講習会を開き、月1回の交通安全だよりを発行。新人スタッフへの添乗指導も欠かさない。
その原点にあるのは、消防士時代に向き合ってきた数々の現場だ。
「ココロのスタッフには、加害者にも被害者にもなってほしくないんです」
その思いから、安全運転の大切さを伝え続けてきた。
人命を守るために歩んだ42年間。そして今も、利用者やスタッフの安全を守るために働き続ける。胸に輝く勲章は、吉野さんが積み重ねてきた歳月そのものを物語っている。












