運転免許を返納する？しない？「免許返納」 についてココロの ケアマネジャーに 聞いてみました

群馬県は車社会。どこへ行くにも車が必要で、普段から車を使う習慣になっています。何かしらの理由で運転に不安が生じたときに、「免許返納」について考え悩むと思います。ですが、「免許を返納したら、生活に支障をきたすのでは？」と躊躇される方が多いです。ケアプランセンターココロの柿沼律子さん、吉羽雅美さん、星野笑美子さんに、運転免許証の自主返納について聞いてみました。
■取材／阿部奈穂子（オリーブ・アンド・パートナーズ）

年間30、40万円は当たり前
意外に高い車の維持費

—— 免許返納について、多くの相談が寄せられているそうですね。
柿沼　家族からは「不安だから免許を返納してほしい」。ご本人は「足が無いと自由に外出ができないので、返納したくない」。両者の意見が合致せずに、相談を受けるケースが増えています。

—— ご家族はどんなときに不安を感じるのでしょう。
吉羽　「同乗していて、センターラインギリギリで走っていて怖かった」「車に傷が増えている。どこかでこすっているんじゃないか」という声もありました。高齢になると視力や瞬発力に自身がなくなってきます。ご本人もそれはわかっていらっしゃいます。ですが、「不安だけれど返納には踏み切れない」というのが実情のようです。

—— 何が返納の壁になるのですか。
柿沼　買い物や医療機関に行くときに、バスやタクシーに乗らなければ行けないのがネックのようです。バス停までが遠い、費用がかかる、バスのステップの乗り降りができるのか、歩行器を乗せられるのかなど。いろいろ考えると不安になりますよね。

星野　桐生のおりひめバスでは、ドライバーが歩行器を乗せたり、下ろしたりしてくれます。タクシーの運転手さんも荷物の積み下ろしを手伝ってくださる方もいます。バスやタクシーは費用がかかるとの声もありますが、車の維持費と比べるとそう高くはないですよね。

—— 車の維持費はどのくらいかかるのでしょう。
柿沼　税金や保険、ガソリン代などを含め、軽自動車は年間25～32万円、小型自動車は32～41万円、普通自動車は50～59万円かかるといわれています（※１）。駐車場を借りている方はそこに駐車料金がプラスされます。トータル的に考えると公共交通を利用した方が安く済む場合もありますね。

※１ mycard調べ 【出典】損害保険料率算出機構「2022年度自動車保険の概況」、国土交通省「自動車燃費一覧（令和５年３月）」

バス定期券やタクシー補助など
市町村ごとの返納時サポートにも注目

—— 免許返納の手続き方法を教えてください。
吉羽　運転免許証を持参し、前橋市の総合交通センターや各地の警察署交通課、交通安全協会などへ申請するだけです。ただし、免許を返すわけですから、帰りの足を確保する必要があります。

—— 免許が無くなると身分証明となるものも無くなりますね。
柿沼　免許返納時、希望で身分証明書代わりになる「運転経歴証明書」の発行を受けられます。返納時のサポートの一つで、費用を全額助成してもらえます。免許返納の手続きにかかる所要時間は、交通安全協会の場合、証明書用の写真撮影込みで60分前後。証明書は２、３週間後に取りにいくか、郵送で送ってもらう方法もあります。総合交通センターは、その日のうちに受け取りまでできるのでオススメです。

—— 免許を返納した人へ、ほかの特典はあるのですか？
星野　お住まいの市町村によって、タクシーの回数券補助やバスの定期券交付といったサポートがあります。

—— 公共交通を使う生活も新鮮かもしれませんね。
吉羽　うちの母は返納して良かった。電車生活を送ることで予想外の人との関わりが増えたと喜んでいます。

柿沼　免許返納後、娘さんや息子さんが買い物や医院への送迎をしてくれる機会が増え、家族の絆が深まったとおっしゃる利用者さんもいますよ。

吉羽　スーパーやドラッグストアでは、買い物をした商品を自宅まで届けてくれるサービスを行っている店舗が増えています。そういったサービスを上手に利用するのもいいと思います。

—— 最後に免許返納を迷っている方にひと言お願いします。
星野　ご自分とご家族のために、ちょっとでも運転に不安を感じたら、返納を考えてみてはいかがでしょう。くわしい情報を知りたい方はご相談ください。一緒にお調べします。