【前橋市にて開催】「齋藤利江とみんなのココロ日和写真展」にこめられた想いとは?

6月15日(土)16日(日)、前橋市芸術文化れんが蔵で開かれる「齋藤利江とみんなのココロ日和写真展」。群馬県桐生市在住の写真家・齊藤利江さんがお母様のアサさんを撮り続けた作品を展示します。同展は2018年、桐生市で行われ、3日間で1500人が来場と大好評でした。第2回となる今回は、以前とは内容が少し変わっています。どんな構成になるのか、また同展にこめられた想いとは……。齋藤さんと主催者であるCOCO-LOの代表取締役・雅樂川陽子さんにインタビューしました。

聞き手・構成/阿部奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)

 
――齋藤さんは、三丁目の夕日(作・西岸良平)シリーズで連載中の写真コラム「三丁目スナップ」でおなじみです。今回の展覧会はそういった昭和30年代の写真ではなく、ご自身のお母様を撮影された写真がメインとなります。なぜこのような展覧会が開かれることになったのでしょうか?
 
齋藤 私はCOCO-LOさんが発刊している季刊誌「ココロ日和」の表紙と裏表紙の写真を担当しています。そんな関係で、ある時、雅樂川さんが私のアトリエに遊びにいらっしゃったのです。昭和30年代の桐生市の写真を見たいと。でも、雅樂川さんは当日、30年代の写真より、母を撮った写真に興味を示されて、「この写真で、家族をテーマにした写真展を開きたい」と言ってくださったのです。
雅樂川 アサさんが、お孫さんの住むニュージーランドに行って、クジャクと一緒に写っている写真に目が釘付けになっちゃったんです。赤いニット帽がお似合いで、なんて元気でかわいらしいおばあちゃんなんだろうと!。それで、「もっとアサさんの写真を見せてください」とお願いしたら、ものすごい枚数があるんですよ。2人のお孫さんの面倒をみている写真や家事をする写真、ひ孫と遊ぶ写真、認知症を発症して施設で生活する写真、93歳で亡くなるまで、ずっと齋藤さんがカメラで追っていたのです。胸が苦しくなるほど、衝撃を受けました。
齋藤 母への感謝の気持ちで撮り続けたのです。私がカメラ店の経営という仕事を続けられたのも母の助けがあったから。撮りためた母の写真をいつか1冊の写真集にまとめられたらいいなあと漠然と思っていました。それを、写真展というカタチで皆さんにご覧いただけたのですから、本当に嬉しかったです。
 
――その写真展「齋藤利江のココロ日和写真展」は2018年3月、桐生市の有鄰館で開かれました。どんな構成だったのですか?

齋藤 時間を逆回りするように、写真を並べました。会場に入ると、まず90代の母の横顔を大きなパネルにした写真。続いて、施設に入った80代から段々若返っていくように……。
雅樂川 齋藤さんのご家族のカタチが見事に表現されていましたね。
 
――来場者の多くは、写真を見ながら泣いていたと聞きました。

雅樂川 若い方は、自分の母親の姿に置き換えたのでしょう。年配の方は、自分の姿と重ね合わせたのだと思います。会場のあちこちから嗚咽が聞こえました。嬉しい涙、悲しい涙、感動の涙、さまざまです。それだけ、齋藤さんの写真には力があるのです。足利市の「ココファーム」の池上社長さんは「これまで数えきれないほど展覧会を見ましたが、こんなに泣いたのは初めて。涙が枯れました」とおっしゃっていました。
齋藤 私自身、いろいろな感情を抱えながら、撮影しましたからね。特に、認知症が進んで施設に入ってからの写真は、涙をこらえてシャッターを押したものが何枚もありました。撮影者の気持ちが写真には如実に表れるものなのですよ。
 

 
――今回、前橋市で第二回目の展覧会が開催となります。今回の特徴を教えてください。

雅樂川 アサさんの写真がメインであるのは前回同様です。103枚のアサさんの写真を展示します。そのほかに2つのコーナーを新設いたします。1つは、齋藤さんが昭和30年代の銀座を写したコーナー。「銀座百点」という雑誌に連載された作品から12点展示します。もう1つは、一般から「家族の絆」をテーマにした写真を公募し、そちらを展示するコーナーです。家族のカタチはそれぞれ。いろいろな家族を、写真を通して、ご覧いただきたいと考えました。
齋藤 実は、皆さんと一緒に展覧会をするのが私の夢だったんです。公募で集まった写真を拝見したら、みんな明るくて幸せそうで……。そんな幸せを応援するために、私は若い頃からカメラ店の仕事をしてきたのです。今、風景や食べ物を撮る人が増えていますが、それと同じように、もっともっと家族の写真を撮ってほしいと思います。特にお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんなど、自分よりも年配の方を……。それはのちにかけがえのない宝物になります。今回の写真展がそのきっかけになればこんなに嬉しいことはありません。
 
――展覧会の両日14時から、齋藤さんが在廊し、皆さんとお話をするギャラリートークの時間も設けられているそうですね。とても楽しみです。齋藤さん、雅樂川さん、今日はありがとうございました。

Top