いつ訪れても、モノがすっきりと片付いている「ココロデイサービスまえばし」。整理上手なスタッフが多いことはもちろんですが、陰の立役者は介護職員の石坂恵子さん。DIY歴5年、自宅にある大工小屋で次々と家具や雑貨を手づくりし、ちょっとしたすき間を収納スペースに変えてしまう名人だとか。石坂さんにDIYの楽しさを聞きました。
取材/阿部奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)
オープンしたばかりの
施設で大活躍
石坂さんは介護職員として、2018年8月にCOCO-LOに入社。そして、オープンしたばかりの「ココロデイサービスまえばし」に配属されました。「建物ができたばかりで、館内の家具や道具が揃いきっていなかったのは、私にとってラッキーでした。DIYする余地がたくさんあるということですから……」と言う石坂さん。
それほどDIYが大好きで、その腕前を「ココロデイサービスまえばし」のために生かし続けているのです。
達人が手がける
スグレモノたち
これまでに彼女が手がけた家具や道具を紹介しましょう。
①ソファ横の「サイドテーブル」
利用者さんはソファに座り、滑車を使って腕の運動をします。そのときに必要不可欠なのがタイマー。「タイマーを置くためのサイドテーブルが欲しい。でも、ソファに座った状態で、操作しやすい高さのテーブルは、市販品では見つからない」というスタッフの声を聞いた石坂さん。ホームセンターで木片を購入し、休日1日かけて、最適な高さのサイドテーブルを手づくりしたそうです。かかった費用は約2千円。
②テーブル下の「ベンチ」
機能訓練をするアクティブコーナーの壁際に設置されている大きなテーブル。その上には、施設のイベントなどを紹介するコルクパネルが置かれています。もったいないのは、テーブル下のすき間空間です。それを有効利用しようと考えた石坂さん。自宅にあったすのこを解体して、荷物が置けるベンチをつくりました。今は、クッションや布団などの置き場として便利に活用されています。
③ベッド下の「滑車付きボード」
「リハビリ用のベッドの下の空間、もったいないなあ。石坂さん、何とかできない?」という理学療法士・深津典子さんのリクエストを受けて、石坂さんが考案したのが滑車付きボード。大きな板の四つ角に滑車を付け、ニスを縫って仕上げた簡単家具ですが、力を入れずに取り出し自由というスグレモノ。ヨガマットやリハビリ道具の収納場所として、重宝されています。
④ST室の「テーブル」
ST室とは言語聴覚士と利用者さんが一対一で、言葉のリハビリや食べ物を咀嚼したり、飲み込むためのリハビリを行う部屋。ここで重要なのは「テーブルの大きさ」です。大きすぎると言語聴覚士と利用者さんの距離が遠すぎますし、小さすぎると近すぎます。「70~80㎝角がちょうどいい」ということで市販の商品を探していましたが、なかなか同施設の雰囲気に合うテーブルが見つからなかったそう。そんなとき、「うちに古いテーブルがある。サイズもピッタリ」とひらめいた石坂さん。オレンジ色に塗られていたそのテーブルの塗装をはがし、きれいにやすりをかけた後、脚の部分は木目を生かした茶色、天板は白に塗り替えました。そのテーブルのお陰で、ST室は爽やかな居心地よい空間になったそうです。
ほかにも、足湯コーナーのサイドテーブル、脱衣室の靴置きも石坂さんの作品です。 「自分がつくったもので、利用者さんが喜んでくれればこれほど嬉しいことはありません」とほほ笑みます。
大工小屋での作業は
最高のリラックスタイム
彼女のDIY好きは、親戚のおじさんの影響だと言います。おじさんの職業は大工。「子どもの頃から、年中、仕事場をのぞきに行っては、道具の使い方を教えてもらっていました。一時は宮大工になろうと、真剣に考えたこともあるんですよ」と笑います。
現在は、そのおじさんが暮らしていた家を譲り受け、家族で住んでいるという石坂さん。敷地内には大工小屋が残っており、電動ののこぎりやかんな、電動ドリルなど本格的な大工道具も、一式揃っているそうです。
休日には大工小屋に一人でこもり、「イヤホンで音楽を聴きながら、DIYをしているのが私の最高のリラックスタイム。頭の中が空っぽになる時間なんです」と言います。ちなみに、特に、作業がはかどる音楽はレゲエやスカだとか。
これから制作しようと思っているのは、事務所のすき間スペースを活用した本棚。「書類が散らかりがちなので、それを整理できればいいなと思って……」とニッコリ。
利用者さんから、「こんなものが欲しいんだけど、つくって」というリクエストがよせられると、すぐに対応してくれる石坂さんを、みんなが頼りにしています。