「ココロアットホーム」リフト付きのお風呂通じてポカポカ温かい交流

疲れが取れる、全身の血行が良くなる、リラックスする、清潔になる、などお風呂の効果は挙げればキリがないほど。そんなお風呂を最大限に楽しんでもらおうと、「ココロアットホーム」では車イスの人でも入浴できるリフトや全国各地の温泉入浴剤、スタッフの介助の元、一人ひとり湯船に浸かるスタイルなどを取り入れ、お風呂好きの利用者さんに喜ばれています。その様子をリポートします。

取材/阿部奈穂子(オリーブ・アンド・パートナーズ)

お風呂は一人が心地いい

 広いスペースに半身浴できるゆったりサイズの湯船を備えた「ココロアットホーム」のお風呂。段差の少ない湯船、要所要所につけられた手すりなど安全面も十分考慮しています。
同施設では毎日午前9時15分~午後3時まで(お昼タイムは除く)、時間を区切って、利用者さんが“一人ずつ”入浴します。
 「湯船の中はホッとできる場所。誰かと一緒ではなく、一人で入るとよりリラックス効果が高いものです。そのため、当施設では“一人ずつ”を重視しているのです」と介護員の中島直子さんは言います。
 とはいえ、一人にかかる入浴タイムに限りがあり、上手に回さないと、たくさんの利用者さんがお風呂を利用できません。「できるだけ多くの方に気持ちよく入浴して頂けるよう、メンバーがそれぞれ声を掛け合いながら入浴介助を行います。メンバーのチームワークが、介助をスムーズに進めるための鍵になります。」と中島さんは言います。

入浴剤を通して温泉話に花が咲く

 お風呂の入り口には、ホワイトボードがあり、「今日のおふろは湯布院」という文字が……。

同施設では、全国各地の温泉入浴剤を10種類以上用意し、日替わりで使用しているそう。温泉巡りの気分を味わってもらおうというスタッフの粋なはからいです。
「利用者さんに人気は登別や湯布院、別府など北海道や九州の温泉の入浴剤。『昔、あそこの温泉に行ったときに、こんな楽しいことがあったんだよ』など、入浴剤を糸口に、温泉旅行の話をしてくださる利用者さんも多いんですよ」と中島さんはニッコリ。

お風呂の中では心もオープン

 お風呂の中ではいつも以上に利用者さんとの会話が弾むのも特徴的だと言います。ご家族のこと、趣味のこと、自身の体調のこと、昔話などなど。裸になることで、心もオープンになるのかもしれません。
 中島さんは、今は介護員ですが、かつては「ココロアットホーム」の事務員をしていました。しかし、「お風呂を通して、利用者さんと介護スタッフの距離が縮まっていく様子を目の当たりにし、『介護の仕事をしてみたい。大変そうだけど、やりがいがありそう』と思ったのです」

 そして、一念発起し、介護初任者研修を受講。2017年に事務員から介護職にキャリア変更したという経緯があります。中島さんにそんな決意をさせてしまうほど、「ココロアットホーム」のお風呂タイムは充実しているのです。

電動リフトで車イスの人も一人入浴が可能

 利用者さんの中には、介護員の力を借りても湯船に入れない人もいます。例えば、車イス生活を送る人や足腰が極端に弱っている人など。そんな利用者さんも気持ちよく入浴してもらえるよう、電動リフトを導入しているのも同施設の特徴です。
 片麻痺があり車イス生活を送るAさんは、毎週月曜にお風呂を目当てに来所します。「リフトで吊り上げ、そのまま湯船に入れてくれるので、身体のどこにも負担がかからず安心です。お湯の中でお尻がつけて、足が伸ばせるのは気持ちがいいですね」と目を細めます。
Aさんのもう一つのお目当ては、湯上りに看護師が言語訓練の一貫で施術する顔のマッサージだそう。「蒸しタオルで温めたあと、クリームで丁寧にマッサージしてくれるんです。お口周りの動きも良くなるし、お肌がツルツルになりますよ。このツルツルは1週間持ちます」と断言します。
 「お風呂大好き」というBさんは、週に4日はここで入浴するそうです。「一番気に入っているのは、機械的でないところ。自分で『身体の隅々まで温まった』と感じるまで、ゆったり湯船に浸かれるところが最高。そのあと、スタッフさんが背中を流してくれるのもありがたいですね」と言います。
 そして、「いつも午前10時前後に入浴し、思いっきりリラックスした後、皆さんとご飯を食べたり、お茶をしたりしてゆったり過ごす時間がとても心地良いのです」と微笑むBさん。
 このように、お風呂を通じたポカポカ温かい交流が、「ココロアットホーム」では毎日のように繰り広げられているのです。

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